2026年10月03日
「朝起きたら片耳が聞こえにくい」「耳が詰まった感じがする」「耳鳴りが急に始まった」。突然の変化は、仕事や会話への不安だけでなく、「このまま戻らなかったら」と気持ちまで緊張させます。
この記事では、突発性難聴と自律神経について現在分かっている範囲、亀有鍼灸治療院やさしあの頸部を中心とした施術、受診後に無理なくできる爪もみと耳のセルフケアをご紹介します。
急に聞こえにくくなったら、まず耳鼻咽喉科へ
突発性難聴は、突然起こる原因不明の感音難聴です。感音難聴とは、音を感じて脳へ伝える内耳などに関係する聞こえの低下をいいます。急な片耳の聞こえにくさ、耳づまり、耳鳴り、めまいなどに気づいたら、鍼灸やセルフケアだけで様子を見ず、できるだけ早く耳鼻咽喉科を受診してください。
厚生労働省の解説でも、発症後すぐ治療を受けないと難聴や耳鳴りが残ることがあるため、早めの受診と治療開始が大切だとされています。鍼灸は検査や薬物療法の代わりではありません。
突発性難聴と自律神経には、どのような関係があるのでしょうか
自律神経には、活動時に働きやすい交感神経と、休息時に働きやすい副交感神経があります。厚生労働省は、突発性難聴の原因はまだ明らかではなく、内耳の血流障害やウイルス感染などが考えられていると説明しています。ストレス、過労、睡眠不足などとの関連も指摘されていますが、「自律神経の乱れだけが原因」とは言えません。
突発性難聴の方と健康な方の心拍・血圧の変動を比べ、自律神経による調節の違いを調べた研究があります。違いを報告した研究がある一方、心拍変動では明確な差が出なかった研究もあり、対象人数も限られています。現段階では、自律神経との関連が研究されているものの、直接の原因として確定したわけではない、と捉えるのが適切です。
やさしあでは、頸部への鍼を中心に状態を整えます
当院の突発性難聴の症状別ページでは、頸椎から仙骨までの背骨や筋肉の状態を触診し、首肩から背中のこりへ施術する方針をご案内しています。
施術では、耳鼻咽喉科への受診状況、発症時期、聞こえにくい側、耳鳴りやめまいの有無を伺います。そのうえで、仰向けで頸部に触れて筋肉の緊張を確認し、頸椎まわりへの鍼を中心に刺激量を調整します。
当院では、首肩から背中にかけての強い緊張をやわらげ、耳へ血液が届きやすい状態をつくることを大切にしています。私の臨床経験では、頸部への鍼を続けるなかで、首肩のこわばりだけでなく、耳の詰まり感や聞こえづらさに変化が見られるケースがあり、施術の手応えを感じています。変化の現れ方や程度には個人差がありますが、耳鼻咽喉科での治療と並行しながら、少しでも日常を過ごしやすい状態へ近づくことを目指します。
当院で行う頸部への鍼施術の一例です。施術内容と刺激量は体調に合わせて調整します。
井穴には、刺さない接触鍼も使います
東洋医学では、手足の爪の生え際付近にあるツボを「井穴(せいけつ)」と呼び、気が出入りする場所と捉えます。当院では頸部への鍼に加え、井穴へ鍼を刺さずに当てる「接触鍼」を状態に応じて使います。当院の接触鍼は先端に磁気を備えていることが特徴です。
私は、頸部への鍼と井穴への接触鍼を組み合わせることで、体の緊張がゆるみやすくなり、耳の症状にもよい変化が現れるケースを臨床で経験しています。鍼を刺さないため、刺激に敏感な方にも取り入れやすい方法です。体調と反応を確認しながら、刺激する場所や時間を一人ひとりに合わせます。
自宅で無理なくできる2つのセルフケア
耳鼻咽喉科での治療と当院の施術に加えて、自宅では手足と耳の末端をやさしく刺激する方法をご案内しています。力を入れすぎず、毎日続けやすい心地よさを大切にしてください。
1.手足の爪をやさしくもむ
左右の爪の両側を反対の手の指でやさしくつまみ、痛くない心地よい程度の強さで、1本につき3〜5秒ずつもみます。左右すべての手指で行い、無理のない範囲で足の指にも行います。強く押し続ける必要はありません。傷、腫れ、強い痛みがある部分は避けてください。
東洋医学では、井穴は気が出入りする場所と考えられています。当院では、爪の生え際をやさしく刺激して末端まで意識を向けることが、張りつめた体を休息へ切り替えるきっかけになると捉えています。頑張って強く刺激するのではなく、手足が少し温まり、呼吸がしやすいと感じる程度で行いましょう。
2.耳をゆっくり動かす
当院がリラクゼーションを目的に案内している方法です。両耳の外側を指で軽く持ち、前へゆっくり10回、次に後ろへゆっくり10回動かします。その後、上・下・横へ、痛くない範囲でそっと引きます。呼吸を止めず、心地よい強さにしてください。
耳をやさしく動かすと、耳まわりのこわばりに気づきやすくなり、温かさを感じる方もいます。痛みやめまいが出たら中止します。耳の皮膚に傷や腫れがあるとき、外耳炎があるとき、耳の手術後で医師の許可がないときは行わないでください。
目指すのは、耳鼻咽喉科の治療を続けながら日常を取り戻すこと
聞こえへの不安が続くと、首肩に力が入り、眠りにくさや疲れを感じることがあります。当院では頸部への鍼と井穴への接触鍼を中心に、首肩の緊張がやわらぐ、耳の詰まり感が軽くなる、音を以前より受け取りやすくなるといった変化を目指します。私が臨床で手応えを感じている方法ですが、経過や感じ方には個人差があります。
「鍼が不安」という方には、刺激量を調整し、刺さない接触鍼も含めてご説明します。病院の治療中でも相談できますが、処方薬の中止や減量を当院から勧めることはありません。
ご相談の際は、「いつから」「左右どちらか」「耳鳴り・耳づまり・めまいの有無」「耳鼻咽喉科で受けている治療」「首肩や睡眠の状態」を分かる範囲でお聞かせください。亀有鍼灸治療院やさしあでは、受診状況とその日の体調を確認しながら施術を考えます。予約・お問い合わせはこちらから受け付けています。
参考情報
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「突発性難聴について」:https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/sensory-organ/s-001
- 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「難聴について」:https://www.jibika.or.jp/owned/hwel/hearingloss/
- 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「突発性難聴」:https://www.jibika.or.jp/modules/disease/index.php?content_id=20%3Fn%3Dmamatena&slug=di0379
- Park S, et al. “Autonomic Nervous Function in Patients with Sudden Sensorineural Hearing Loss and Its Association with Prognosis and Disease Severity”(2021):https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33951629/
- Schulz S, et al. “Quantification of autonomic regulation in patients with sudden sensorineural hearing loss”(2013):https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23491325/
